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2010年11月19日 (金)

一日一笑

昔から「病いは気から」とか「笑いは身体の薬」などと言われます。

最近は、「笑いが科学的に健康を維持」したり、「笑いが病気を克服する力」があるようにも言われます。

今、この「笑いの科学的効果」が研究されつつあり、「笑いの医学的効果」を研究する学会もできたようですよ。

愉快な小咄を聞く直前と、その小咄を聞いた数時間後の患者さんの検査データを比較すると、病理学的に良い成績が出ているそうです。

他にもいろいろ「笑いの効果」は有って、取り立てて効果を立証せずとも、笑っているときにリラックスしていい顔をしているのは、誰にでも言えることです。

そして、高齢も、死も、ユーモアを入れた会話なら、重たくならず、返って素直に捉えることもできそうですね。

福井県おおい町の名田庄診療所所長の中村伸一先生は、山間地で医療に取り組む医師です。

この名田庄地区で、たったひとりの医師として住民たちを支え、「島のドクター」ならぬ「陸の孤島のドクター」なのです。

先日、「赤ひげ先生」とも慕われる「中村伸一先生」のコラムを読みました。

コラムの中に中村先生は、故郷でもない山村で、18年もの長期にわたって診療をされている理由を、「患者さんを治療しながら、逆に自分が癒されているからだ」と書いておられます。

きっと、施したり、施されたり、「お互いさまの関係」があるからこそ長続きしているのですよね。

中村先生のコラムの中に、ご高齢の方や、山村で生活している方は、相当なユーモアの持ち主で、それが「生活の知恵」でもあり「長生きの秘訣」とも思える内容がありましたのでご紹介します。

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あるおばあちゃんとの「診察会話」より

    ばあさま:自分が、まさかこんなに
         長生きをするとは思わんかった
         先生! わたしゃー、いつまで生きるんですやろ?

    中村先生:ウ~ン、多分、死ぬまで生きるんでしょうね

    ばあさま:そりゃあ、間違いない! それでも
         早くお迎えが来んかなと、いつも願っとります

    中村先生:それなら「二週間後にお迎えがきますよ!」って
         言われたら、どう感じますか?

    ばあさま:そりゃあ、困りますわー
         だって、まだ、死にとうないですから

    中村先生:アレレ、さっき言ったことと違いますね
         なんだかんだ言いながら
         ホントは、長生きしたいんでしょう?
         すでに長生きしていますけど

    ばあさま:でも先生、長生きも、こんなに腰が
         曲がってしもうたら、もうあきませんわ

    中村先生:腰はともかく、根性は曲がっていませんか?

    ばあさま:アッハッハッー
         根性は、若い時から曲がっとるから
         今更どうってことないですわ

    中村先生:別に威張ることないですわ

    ばあさま:でも、物忘れが激しゅうなって
         ほんの少し前のことも、すぐに
         忘れてしもうて、あきませんわー

    中村先生:もしかして、死ぬことも忘れていませんか?

    ばあさま:アッ! そういえば90年ほど
         死ぬのを忘れとった! アッハッハッー

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ばあさまのパワー、恐るべし!です。

会話から生まれる笑いの端々に「心の豊かさ」、「たくましさ」、「かわいさ」、「いとおしさ」そして「生きることの厳しさ」、「辛さ」などを感じるのは、私だけでしょうか。

そのまんま、そのまんま、ばあさまも、中村先生も、お救いのど真ん中にいらっしゃいいました。