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2010年9月25日 (土)

十年後に届く手紙-1

10年前、2000年(平成12年)に「福井テレビわんぱくフェア」の会場で「10年後の子供たちに手紙を書く」というイベントがあったそうです。

題して「十年後に届くママからの手紙」です。

それは、ママに限らず、パパや、おじいちゃん、おばあちゃんが書いた手紙を毎年預かり、10年後に届けてもらうというイベントです。

そして今年は、福井テレビが10年間保管していた「それらの手紙を初めて届ける年」にあたります。

預かっていた手紙810通のうち、宛先不明で、どうしても届けることの出来なかった手紙が68通あったそうです。

先日、福井テレビで「何通かの手紙を追跡し、その現状を聞く」という番組が放映されました。

番組で放映された3通のうち、1通のご家族の事例をご紹介します。

2通のご家族は、お子さん2人、または、下の子が出産間近で、「10年後の両親と、2人の子供で仲良く暮らしているであろう家族」に宛てた手紙でした。

そのご家族の想像通り、健やかな子供たちの成長と、夫婦仲むつまじい家庭に届いた手紙は、見ていてもほほえましく、またうらやましいものでした。

しかし、3通目のご家族は、10年前はご夫婦と3歳、1歳の男の子の4人家族で、子育てに追われ本当にバタバタで、大変な最中にママが書いた手紙でした。

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    ママは、今、大変です。
    手紙を書いている間も、大変です。

    でも、10年後、きっといい子になっていると思って
    頑張っています。

    明後日は、富士急ハイランドへ行く予定です。
    10年後でも、覚えていてくれていますかね?

    昨日は、一生懸命、土地探しをしていました。
    パパと。

    10年後は、家ありますか?
    それぞれに部屋あたっていますか?

    あまり長いこと時間かけていられないので終わります。

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そして10年後、やっと探しあて、手紙を届けた時は、お父さんがその3年後に急な病気で亡くなり、お母さんが2人のワンパク坊主を無我夢中で育てておられる真っ最中でした。

10年て「アッ」という間です。でも「一寸先は闇」と言われる通り、ほんの少し先のことでさえも、何がどうなるかわからない。

思い描いていた通りになっていることの方が、おかしいとも言えます。「まさかこんなことになるなんて」という方が、現実なのかもしれません。

アナウンサーの「当時のことを振り返ってもらっていかがですか?」の問いに、そのお母さんは次のように答えられました。

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    悲しむまもなく、子供と文字通り生きるので必死でした。
    ひとつ前のことを思い出すことが、疲れて思い出せない。
    それぐらい、毎日がいっぱい、いっぱいです。

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振り返ることができる。立ち止まって考えられる。これ自体が「恵まれていること」と、初めて気づきました。

その手紙をじっと聞いていた長男が、お父さんが亡くなってからのお母さんの頑張りぶりをこう話しました。

次回につづく‥‥