二匹のねずみ
2月26日、27日の両日、春を呼ぶ「勝山左義長まつり」が、好天にも恵まれ、極めて盛況のうちに終わりました。
新聞報道によると2日間で約12万人もの観光客が訪れたそうです。
勝山では、2月に入ってからまとまった雪も降らず、年末からの大雪が嘘のように穏やかな天候が続きました。
おかしなもので、3月に入った途端、朝起きてみると5センチほどの積雪があり、見慣れた雪のはずなのに、返って新鮮に感じたほどです。
この時期に降った雪は、まず積もることもなく、昼間の太陽の日差しですぐに溶けてしまいます。
3月に降る雪は、まるで「別れを惜しむ」かのように降ります。
今ならそんな雪景色を楽しめますが、大寒の頃に「ボタボタ」と音がするように降る雪は、情緒とかを感じている暇はありません。
気持ちは「すっかり春の気分」ですが、春の陽気に大雪の記憶がおぼろになり、また「冬が来て大慌て」ということになりがちです。
忘れてはならぬ「大雪の教訓」です。今年の体験、葛藤を踏まえ、「次回への備え」としたいものですね。
私、このことって、人生とよく似ている‥‥と思うのです。
そんな今の私の心に、「譬喩経(ひゆきょう)」の「黒白二鼠(こくびゃくにそ)の喩(たと)え話」が浮かびました。
その喩え話は、次のような内容です。
旅人が荒野を歩いていて、突然猛獣に襲われました。
慌てて逃げ出し、ちょうどあった空井戸に駆け寄り、
たれている一本の藤づるで、井戸の下に降りていきました。
やがて猛獣が追いつき、井戸を覗いて吠えかかりますが
降りることができません。
旅人はホッと一安心し、底を見ると
毒を持った恐ろしい龍が大きな口を開けています。
途中で降りるのを止め、まわりの淵に足をかけようとしましたが
そこにも毒蛇がいて、今にも襲いかかろうとしています。
旅人は、ますます恐れおののき、今はもうこの藤づるだけが
自分の命の綱だと必死にしがみつきます。
ところが、今度は井戸の口のところに黒と白の
ねずみが出てきて、代わる代わる藤づるの根をかじり始めます。
旅人は、「これは大変」と、しきりに藤づるを揺さぶりました。
すると、たまたま根元にあった蜂の巣から
数滴の蜂蜜がこぼれ落ち、偶然にも旅人の口の中に入ります。
それは、なんとも言えないおいしさでした。
旅人は、目の前に迫りくる現実を忘れ、ただ落ちてくる蜂蜜を
もっとたくさん口に入れようと、しきりにもがき始めました。
今の私は、この喩え話に出てくる旅人のどの段階にいるのだろうか?
しっかりと現実を見極めているだろうか?
この春の陽気に、ふと考えてしまう‥‥。
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